1+1は変えられるか(2)

おきなの暇つぶしのささやきにようこそ。

Tp: 数字としての1は、普通はいくつあってもよい。しかし、時空を考えたときには1と同一の1は存在しないことを前回は勝手に考えた。2次元空間でも1と重なり合う1はないこと(素粒子レベルでも重なり合うことがない)、同じ1を別の1が示すことができないこと(何をもって1とすることができるか)。最初を1とした場合、次の1は最初の1と完全一致する1ではないこと。これをおよそ1に同等とみなし1’とすると、続く数字は、1、2’、3’・・・9’、1O’となる。1Oの0は「O」で0ではない(これは今後述べていきたい)。1+1が成り立たないのだ(ここでは1+1=10、1+1=0になる2進法や環などの数学を考えてはいない)。

 少し考えを変えて、「字」として表さない場合、他にどのような方法があるのだろうか。五感を考えた場合、視覚、聴覚、触覚が基本的に認知しやすいと思われる。1と書くのは視覚である。その場合、光の点滅を見て数字を理解する方法もある。最初の光の点滅を1回、次の点滅が1回目と酷似している光。聴覚としては、声に出して「いちたすいちはなあに」ということができる。この場合、「1」と表記する必要がない。これは極めて高度な方法である。しかし、いちといちの間にはずれが生じるのだ。発音や声の質はもちろんであるが、「いち」と「いぢ」、「いち」と「いじ」のような違いも。実際にりんごがいくつ?ということを考えてみると、りんごがおよそ2あったとすると、想像としておよそ2あると言うことができる。大きさが極端に異なる場合もあり、食べかけのもの、腐れたものもあろう。これを最初の1と次の1が一致しているとは考えられない。すべて言葉でやりとりしていた時代には間違いなく、今よりも正しい「数」の意味を理解していたのであろう。他には、モールス信号のような音で表す方法もある。これはかなり正確であるが。触覚としての認識としては、2個らしき石を手で触ってみて大小、硬さ、形が違うがあえて2らしきと思うであろう。痛みなどもそうである。歯の痛みもズキ、ズキーンとしたときに別の痛みであるが、あえていうなら2度らしいかもとなる。しかし、音でも光でも、同じ長さや強度、感触、刺激など、考えてみても完全同一のものはない。つまり、1はそのとき限りの1であり、次の1は最初の1ではない。数字としての1も現実的世界においても1と同一の1はない。数とは何か。数は類似のものを”数える”こと、”測る”こと(量、位置、長さ、重さ、角、熱、時間など単位のあるもの)が基本だが、ここでは自然界の法則を数として考えるのではなく。数えることの「数」そのものを考えている。

 以前のブログで、ソクラテスがケベスに語った、「一に一を加えたときに、(二となったのは)、加えられたほうの一なのか、それとも加わったほうの一なのか、あるいは、この加わった一と加えられた一とが、一方の他方への附加ということに原因して、(二となった)のか。それすらそうとは自分に納得できないからだ。なぜって、不思議ではないのか。・・・・」(松永雄二訳)a)を紹介した。漢字で表す数字は、この哲学的問題をきわめて都合よく解決してくれる手段であることに気が付く。1+1=⼆(ここの表示では同じ長さとなってしまうが、本来は上の-と下の一の長さが違うことはご存知のとおり。(注:旧漢字の「弐」は考えないこととする)。つまり、これは右と左の1が違うことを意味しており、おなじ長さで示される「Ⅱ」などではなく、あえて「二」と書いたのである。ソクラテスの問いに対しての答えを示すかのような哲学を含んでいる。当然ながら、「三」も違う。数字の表し方はさまざまあるが、「ふたつ」という奥深い意味をこれほどまで端的に示せるのは漢字であろう。古代ギリシャではフェニキア文字の頭文字を用いる方法(頭音式:Ⅰ、Δ、Hなど)とアルファベット(アルファとベータが語源)の順番で表す方法があり、4B.C.以降のあるときから後者が用いられるようになったようだb)。すなわち、A(α)、 B(β)、Γ(γ)は、数を表すために発明したのではなく、文字の順番を数に当てはめたものである。ソクラテスの煩悩を解き放つ(解脱とまでは言わないが)には不都合といえる。

 前回のブログで書いた日本語のひらがなの「に」やカタカナの「ニ」も貢献しているが。ちなみに、ローマ数字のⅡは、ⅠとⅠが同じで融合できないものとして表されている。しかし、アラビア数字の「2」は1なるものと1なるものの融合が生じている意味を含む。「Ⅱ」はⅠとⅠが合わさっても変化しないⅡで示されている(〇+〇=〇〇)。一方、「2」は1と1が合わさると変化して2と示される(〇+〇=◎)。例えば、1杯の水と1杯の水を合わせると2杯の水となる。1mlの水と1mlのエタノールを加えて2mlと表すこともできる。実際には2mlより少なくなるが、この数字の中に物質の変化を示しており、数字に込められた思想が存在する。Ⅱmlではないのである。蛇足ではあるが、「2」は古代インド(3B.C.以前)のブラーフミー文字の「ニ」が2の上の「⌒」から下の「ー」を書くときに「/」がつながってできた、「ニ」→「Z」→「2」と考えられているc)。一と一の融合を意味するゆえんである。ただ、これまで書いたように、1+1=2は誤解を招くとともに我々の空間(時空)では成り立たない。

あくまで勝手な想像とフィクションを交えた語部 ーおきなー 注)主張ではなく、ささやき  

引用文献・参考図書

a) プラトン全集 1.パイドン(四五).282-283. 松永雄二 訳.岩波書店

b) ジョセフ・メイザー.数学記号の誕生.松浦俊輔 訳.河出書房新社

c) David Reiner.古代エジプトの数学 文明繁栄のアルゴリズム.4-5.磯田正美 監修、冨永 星 訳.丸善出版

三浦伸夫.文明の中の数学.現代数学社.

ジョルジュ・イフラー.数字の歴史.松原秀一・彌永昌吉 監修.彌永みち代・丸山正義・後平隆 訳.平凡社

八木沢 敬.「数」を分析する.岩波現代全書

ミッドハット・ガザレ.<数>の秘密 記数法と無限.小屋良祐 訳

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