イチジクのカプリフィケーションを徹底的に読み解く

古代ギリシャでは昆虫の役割を知らなかった。《同じ類の木で或るものは実を結び、或るものはそれ自身は実を結ばないが、実を結ぶものがその実を成熟させるのに寄与するということがある。たとえば、イチジクや野生イチジクの場合である》ーアリストテレス1)

エンペドクレスの思想を調べていたらイチジクにたどり着いた。きになって。。。。。別枠で書いてしまった。小川洋子 訳(作家の小川洋子さんではない)のテオプラストス「植物誌 1」2)に書かれたイチジクのカプリフィケイションの註釈は、調べうる限りで最近の国内の園芸(果樹)書よりも詳しく的確であり、素晴らしい(イチジクに限らず)。この書を読めばこれを読まなくても済む筈であった。しかし、‘おきなのささやき’は必要以上の情報を提供することに成功した。ここでは雑学ではない学術としての“カプリフィケーション”に焦点を当てて、アダムとイブが食べた《知恵の実》がイチジクだった?とか、エジプトでは生命の樹として記録されている8)とかは考察しない。

1)花と虫の関係 

イチジク(クワ科イチジク属:Ficus Carica L. 無花果:花は卵形の袋状の中にあるので、花が咲かないのに実ができるようにみえる)。イチジクの花・果実は分かりにくいので解説する。イチジクは、園芸学的に花の種類や結果習性により、カプリ系(Caprifig type)、スミルナ系(Smyrna type)、普通系(Common type: mission fig)、サンペドロ系(San Pedro type)に分類される3),4)。雄花をつけるのはカプリ系だけで、他は雌花しかつけない4)(普通系では少数の雄花もみられるようだ)5)。ここで大事なのは、カプリ系には雄花と雌花があることだ(雌雄異花)。つまり、雄株ではなく雌雄同株(雌雄異花同株:monoecious)である(図-1、図-2)。また、カプリ系には普通の雌花と虫癭花ちゅうえいか(gall flower; 虫によってできたこぶではないので誤称という学者15)もいる)がある5)。虫えい花はイチジクコバチが産卵しやすい短い花柱と扁平の柱頭となっていて5),10)、子房に卵を産み付けられる2)。その後、孵化した幼虫によって子房の胚珠(種子の部分)は食害される2), 6), 7)

花の構造(隠頭花序;花序軸が多肉化して中央が窪んだ形状)は図-2に示す。イチジクの花は花托かたく花床(かしょう):果実としては果托(果床):リンゴもこの部分を食べている)の内壁に多くの小花をつけて包みこむような袋状の構造の花のう(花嚢(かのう):果嚢)となっている7), 8)。雌花は1花柱、1子房であり9)、この小さな花が小果(痩果そうか)となる。イチジクと共生・共進化関係7), 横山・蘇)のイチジクコバチ(ブラストファーガ:fig wasp: Blastophaga psenes Linnaeus (1758): Blastophaga grossorum Gravenhorst(1829))は子房食から進化した昆虫で、イチジクコバチの雌は蜜を求めるのでも花粉を食べるためでもなく、子房に産卵するために袋状となった花のうの先端の開口部(目)に入る7)。イチジクコバチはカプリ系イチジクの虫えい花の雌蕊(めしべ)の花柱の先端(花柱が中空となっている)5)から産卵管を差し込んで子房に産卵する(図-2参照)。雄は雌よりも先にふ化して、子房から出てきた雄は羽が無く(無翅)、雌のいる子房(虫えい)を探して穴をあけて交尾後花のうの中で死んでしまう。その前に、けなげにも雌のコバチが外に出られるように花のうをかじって穴を開けてあげるようだ横山・蘇)。雌は交尾後に虫えい(子房)から出てきて、花粉を花粉用ポケット7)に入れて外に飛び立つ。スミルナ系などのイチジクに入り込んで雌花(柱頭)に花粉を運び受粉する。しかし、産卵のために花柱の先端から産卵管を突き刺すが、花柱は長く、また曲がっているために産卵管の先が子房まで達せず、産卵ができない7)。 

この仮面ライダーBLACKのような容姿(図-3左:メス)のブラストファーガについて、ほんの少し紹介。イチジクコバチの雌は虫癭花の二裂(二股)になっている柱頭を押し開いて、花柱の内溝の基部に1個産卵する(図-2)。産卵後約2か月で成虫となり、虫癭の殻を破って出てくる。花のう内で交尾後、雄虫はそのまま果内で死滅する。雌虫は頂部の開口から外に出て、次期果の花のうに入り、この際に羽を失い、産卵後(または産卵できずに)果内で死滅する18)。

オスのブラストファーガはどうかというと、目を疑うほど異様な情けない容姿をしている(図-3右)。メスのカッコよさに比べてどうしたんだろう。成虫となったオスは芋虫のような格好で、羽もなくつぶらな瞳でまるで別の生き物だ。女王様に仕え、狭い空間でのみ過ごすかわいそうないきものだ。

さらに、ヒメバチ(ケントリネース:Philotrypesis caricae L.)がイチジクコバチの卵か幼虫のいる子房に産卵管を突き刺してその虫こぶの組織を餌とするため、イチジクコバチは食料不足やヒメバチの毒素で死ぬらしい2)。(植物誌 12)Philotrypesis cariacaeとスペルミスあり)

2)カプリフィケーションの定義

イチジクコバチがカプリ系イチジクの花粉をつけて花のうの外に出て、雌株であるスミルナ系などのイチジクの雌蕊に受粉を行い結実させることである。果樹の辞典によれば、「単為結果力(受粉しなくても果実が肥大する)のないイチジクに対して、雄花を有するカプリ系の花たく内に生息するブラストファーガ(イチジクコバチ)という微細昆虫を利用し、カプリ系の花粉を受粉させて結実に導く現象をカプリフィケーションと呼んでいる」10)とある。

古くからイチジクの受粉を人為的に助ける技術として、カプリフィケーションとして知られており、「野生イチジクの実の中にはイチジクバチが入っている。最初は小うじであるが皮が破れてはがれると、この皮を残して飛び出し、普通イチジクの実の口から入り、実が落ちないようにするのである。それゆえ農夫は野生イチジクの実を普通のイチジクに結びつけたり、普通イチジクのそばに野生イチジクを植えたりするのである」11)とある。また、テオプラストス(Theophrastus)『植物誌』にあるカプリフィケーション(エリーナスモス)については、「熟す前に実を落とす樹木の中で特に著しいのがイチジクとナツメヤシである。両者には人の助けが必要である。そこでカプリフィケーションも行われている(それに対する処置の一つがカプリフィケーションである)。木に吊るされた野生イチジク(エリーネオン)の実からイチジクコバチ(プセン:Blastophaga psenes)が飛び出すと、それらは栽培イチジクの実の先端を食べ、それらを太らせる」2), 12)。(註釈;野生イチジク、すなわちカプリイチジクの実を使って栽培イチジクの花を受粉させ、果実を熟させる技術である2)。;野生イチジクと訳したカプリイチジクの花粉がある種の小蜂によって栽培種のイチジクの花に運ばれるが、この現象を利用した一種の人工授粉12))とある。

また、プリニウス(Plinius)の「博物誌」では、「野生イチジク(文字通りにはヤギのイチジク)を、虫媒受粉を行うために用いる13)(註釈;野生イチジクの実を栽培イチジクの畑に吊るして寄生バチに受粉させ、イチジクの結実を促進させる方法を行う)13b)」。このように、カプリフィケーションの意味は、「果実の結実に対して人間がそれに助力することをという」1b)と理解される。 「一種の人工授粉である」11b), 12b)と書かれているのもあるが、「人為的」に受粉を助けることはするが、イチジクでは虫媒による受粉であり、人手によって花粉を柱頭につける「人工授粉」ではない。

3)受粉についての理解

テオプラストスは、イチジクコバチの役目を「受粉」との理解に至らず、実の頂点を食べ、傷をつけることによって実を太らせ、落果を防ぐと考えていたようだ2)。プリニウスもイチジクコバチの役割については、主に果実の成熟促進で次いで落果防止であり、受粉を行うこととは思ってもいない。「カプリイチジクと呼ばれる野生の種類があって、これは決して熟さないが、自分自身はもっていないものを他の木に与える。このイチジクはブユ(別の書ではミバエと訳している13c))を生ずるのであるが、ブユは木から栄養を取られ、その腐った実から飛び出して同類の木(栽培されたイチジク)のところへ行く。そして繰り返し実をついばんで穴をあける。それによって果実の内部に光をもたらし、それを肥やす(実をならせる)空気(風)を入れる。ブユは果実の未成熟部分の乳のような汁を吸い取るが自然に乾燥する。そのためカプリイチジクは風上に生育することが許される。北風の当たる地域では野生イチジク(カプリフィクス)をイチジクに結びつけるようなことは必要ない。イチジクはひとりでに乾燥してできる裂け目によって、ブユの働きと同じ結果が生ずるからだ。ほこりが多いところ、人が頻繁に行きかうところもブユを必要としない。というのは、ほこりがイチジクを乾燥させて乳汁を吸いとる役目があるからである。このようにほこりや野生イチジクを用いる方法には、実の落下を防ぐという利点もある」13c), 14)と記されている。

 話は変わるが、ここで重要なのは、イチジクコバチが①果実に傷をつける(熟期が2週間程度早まる)9)ことと、②果実の未成熟部分の乳のような汁(乳管細胞から分泌される白色の乳液(ficin:フィシン))を吸ってくれることである。完熟していない果実を食べると皮膚に強い痛みを感じたりかぶれたりする10)。エジプトではイチジクを鉄鉤で実に切目をつけて熟させる、キプロスではイチジクの実に切込みを入れて汁を出せて熟させることを行っていた13d), 14b)。成熟促進のために果実を傷をつける技術(ガシュイング)は、古代エジプトでは紀元前1100年頃には知られていたようだ19)。また、ギリシャでは紀元前3世紀頃にはイチジクの果頂部(目)にオリーブ油を塗り付ける方法も知られていた9), 15)(Oleification)。果実に傷をつけることや油を入れることで成熟を早めるのは、エチレンによる作用である5), 19)。クライマクテリック型の果物ではないとの記載もあるが16)、今はクライマクテリック型の果実として認められている5)。プリニウスの「あらゆる木の実の中でイチジクだけは、熟させるための特別な処置が施され、しかも確かにこの実はまた異常な生長をするものである」13)との註釈に<特別な処置は植物性の肥料を施す意の説を取る方がよい>とあるが、上述したように”イチジク果実の目にオリーブ油を入れる”ことと推測できる。

A)カプリ系における花の構造から日本の科学の低迷を知る

専門書をみると、カプリ系イチジクは「雄花と虫えい花がつき8), 10b)、雄花は花頂部付近、虫えい花は花托の下半部に着生する10)」とか、「雄花、雌花および虫えい花があり8), 10c), 17), 、頂端に雄花、左右に虫えい花、下方に雌花がある17)」とか、読んでいて混乱した。もちろん、生物であるから例外も生じるので、雌花の中でも短い花柱や長い花柱の両方もつものや、普通系でも雄花をもつものもでてきたりするが、一体、カプリ系のイチジクは雄花と虫えい花だけなのか、普通の雌花も有るのか? どの書も書き写しのようで分かりやすく解説されていない。いろいろと図書館を回ってみたが、これについて国内書物に詳しく記載されているものが見当たらない。カプリフィケーションは生物学的にも生命の在り方においても、ものすごく重要な現象と思われるが、この分野と最も近い園芸の書を調べても簡単な説明で済まされている。現在の浅く広い上辺だけの知識の横行は、本質に迫る真・実の「知」を侮っていると思われる。これは低迷する我が国の科学分野全般における危機として憂いを感ぜられずにはおられない。

さて、このような曖昧さを何とか解決できないかと思って、古い書物をたまたま見ていると、あった。菊池秋雄 名誉教授の著書18)である。以下に一部を記す。

花の性能について:無花果は先天的の特性として、花は雄花と雌花に分化している。雌花には三様があり、完全な雌花(pistillate flower)、虫癭花(gall flower)、そして中性花(mule flower)と言われるものがあり、中性花の花柱は両者の中間で雌花の機能及び虫えい形成の機能も欠如している。虫癭花の柱頭の発育は不完全で粘液もでず、受粉しても花粉が発芽しない。胚の発育も不完全で受精の機能が欠如している。

カプリ種(系)は「雄花、雌花及び虫癭花を具備する(図-2)。雄花は花托内の上半部に、虫癭花は下半分に密生する。雌花は虫癭花と同様に下半分に着生するが、その数は至って少ない」とあり、カプリ系には雄花、雌花及び虫癭花があることが判明した。ここまでなら、並みの解説書であるが、流石に気骨のある先人は違う。「第1期果(夏イチジク)をprofichiといい、雄花と虫癭花があり、雌花を欠く。第2期果(秋イチジク:新梢に着生)をmammoniと呼び、雌花と虫癭花はあるが、雄花を欠く。第3期果は(第2期果が越冬して第1期果より先に熟す)mammi(mammeである)といい、雄花と虫癭花のみである」。つまり、雌花は第2期果のみにあり、雄花は第2期果に無い。虫癭花は各期ある。また、本書はこれまでにない知恵をさらに授けてくれる。「第3期果から飛び出した雌虫(イチジクコバチ)は第1期果に入るが雌花がないので受粉できない。第1期果から出た雌虫が第2期果に侵入して雌花に受粉する。雌花の数はほんの僅かであるが完全な種子ができる。この受粉を特に‘caprification’という」とあり、必ずしもcapri系から別の系(スミルナ系など)への受粉を指す用語としていないことが分かる。しかしながら、イチジクでは少なくとも、野生イチジク(カプリ系)からスミルナ系などへの受粉をいう。ので、ここは疑問が残る。

雑談:イチジクは「雄株と雌株がある」との書7)もある。カプリ系には単に雄花のみを有するもの雌花のみを有するものがある18)ので雄株がないわけではないが、植物学的にイチジクは雌雄異株とされるのか、雌株、雄株、雌雄同株もあるとなるのか。調べると疲れそうだ・・・。

日本では主に単為結果する普通系とサンペドロ系が栽培されている。サンペドロ系の秋果には受粉が必要である4), 17)。「サンペドロ系の第2果はスミルナ系で受精しないと結実しない」9)との記載は「カプリ系」の誤りである。国内品種のほとんどは普通系の”蓬萊(ほうらい)()”(秋果用)か”桝井ドーフィン”(夏・秋果兼用)である8)。”蓬萊(莱)柿”を「ほうらいがき」と記載17)している書もあるが、「ほうらい3), 8), 9)である。

B)生命は自然発生なのか

テオプラストスの書で「イチジクコバチは野生イチジクの実から出てくるのだが、イチジクの種子から生まれる。その証拠として実の中に種子がみられないことである」2), 12)とあるが、これは子房の種と思われるところからイチジクコバチが出てくるからである。これをみて、イチジクコバチは自然発生すると考えたのは無理もない。テオプラストスは、ものが腐敗して(うじ)のような下等動物が自然発生する(アリストテレスの理論)のと同じように、イチジクには生命を生み出す本性があると考えていたようだ2b)。ご存知のように19世紀にパスツールによって否定されるまで信じられてきた。でもこれは奥深い。なぜ、イチジクコバチはイチジクとこのような関係をもつようになったのか。それをつなぐ何かが必要になる筈だ。勝手な想像だが、植物から昆虫に遺伝子ではない物質?が昆虫に入り込んで遺伝子を改変したと思われる。なぜ、長い産卵管を持てなかったのか。長い産卵管があればスミルナ系イチジクなどにも産卵できたはずだ。戦略的にはその方が子孫を増やせるのではないか。イチジクは単為結果という、イチジクコバチを必要としない戦略ももっているのに。まあ、単為結果してしまうと種子ができないので、遺伝的変異(環境適応性)を広げるのは不利になるが。いわゆる“命(魂)の自然発生”について結論を出すにはまだ早い。

その他:プリニウス註釈が気になったので。「ミバエの雌はヤギイチジクに産卵する。成虫になってそこから飛び立ったミバエは身体に花粉をつけたまま美味しい実を成らせるイチジクの中に入り、受粉させる。というのも、このイチジクは雄の機能が衰えていて自家受粉できないからである。このミバエは学名Chalcidoideaであろう」13c)と記されている。ギリシャ語の意味として雄ヤギであるが<野生イチジク>でよいと思う。また、Chalcidoideaはハチ目コバチ上科であるが、ミバエはハエ目ミバエ科、ブユ14)はハエ目ブユ科と別物なので‟コバチ”(ハチ目細腰亜目コバチ上科)とすべきであろう。ちなみに、コバチを「胡蜂(こばち)」と書かれたものもある9)が、これは「スズメバチ」と読みハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科の総称で、コバチとは違う種である。なぜ胡蜂と書いたのか。おそらく、スズメバチはwaspとも言うことからこの漢字をあてたと空想する。また、「シカモア-イチジクの受粉を助ける特別なスズメバチ」がいるとした書19)があるので調べると、これはシカモアイチジク(Ficus sycomorus L.)に共生する虫、セラトソレンCeratosolen arabicus;エジプトでは絶滅)と思われ、イチジク(シカモアなど)の花粉を媒介するようだ。Ceratosolenはブラストファーガと同じfig waspグループのAgaonidae(アガオニ科)に属するので、スズメバチではない。また、「雄の機能が衰えていて自家受粉できない」のではなく、カプリ系イチジクをみると葯(花粉)の成熟は雌花の成熟よりも数週間遅いため、雌花の受精能力が落ちて自家受精は基本的に不可能となる15)。雌の機能が先に衰えるのである。

C 古代には技術があったが

古代よりナツメヤシは雄花の花粉(埃)を雌花につけることで実がなることを知っていた(アイキャッチ画像参照)。テオプラストスはイチジクのカプリフィケーションとナツメヤシの受粉に何らかの共通の現象を見ていたとされるが2)、コバチが小さかった、虫こぶから生まれてきたなど、素直な思考を妨げる要因からイチジクコバチの役割が花粉の受粉であると見抜けなかったのは仕方ない。しかし、イチジクの中を切ってナツメヤシと同じような埃(花粉)をイチジクの穴に入れてみる人がいなかったのか?イチジクコバチが身に付けている花粉に気付けなかったのか。死んだイチジクコバチでもよいので、中に入れてみようという好奇心はなかったのか。新しい知識は好奇心、これまでと違うアプローチから始まる。

読んでのごとく、古代において技術はあった。実をならせるための工夫、成熟を早めるための処理など、生物の現象を利用して人が益となるような技術を発見してそれを利用できるようにしていた。しかし、その解釈は間違っていた or できなかった。すべてではないが。つまり、科学への導きはできなかったのだ。その現象が生じるのは「なぜ」なのかを究明すること、これが科学である。この時代の制約、現代における化学、物理などの様々な知識・情報の蓄積はほとんどなかった、測定・観察のための器具が未発達であったというかもしれないが、いわゆる実験を行い確認しようとしなかった。机上の空論に走ってしまい、重いものと軽いものを結びつけることさえしなかった。

最後に プリニウスもアリストテレスを引用して「野生のイチジクは決して成熟しないが、別のイチジクに自分がもちえないものを与える。それはちょうど腐っていく果物から新しい果物が生育するように、その因果関係が自然を介して受け渡されるからである」13c)(野生のイチジクは決して熟さないが、別のイチジクに自分自身がもっていないものを与える。それは腐敗するものから何かが生ずるのと全く同じく因果の自然的結果であるから)14)と語っている・・・ウーム。こうなると科学ではなく哲学だ。

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アイキャッチ画像について アッシュル・ナツィルパル2世の王宮の壁(ニムルド近郊の遺跡)のレリーフにあるナツメヤシに受粉していると思われる神であろう姿を参考に創作した。ナツメヤシの木は雌雄異株で、雄花を持って雌花に受粉している。左はヒトに生活の知恵を授けた神のホモ・クロウである。右はヒトに数学の知恵を授けたマヤのゼロ神である。

引用・参考文献

1)アリストテレス全集 9.動物運動論 動物進行論 動物発生論.島崎三郎 訳.動物発生論:第1巻第1章.95.1969.岩波書店.⦅1b)動物発生論 第1巻第2章 註釈(21)⦆

2)テオプラストス.植物誌 1.西洋古典叢書.第2巻第八章.小川洋子 訳.2008.京都大学学術出版会.⦅2b)第3巻第Ⅰ章⦆

3)平 智.果樹園芸学.2.2.11 イチジク. 24-25.米森敬三 編者.2015.朝倉書店

4)大坪孝之.果樹園芸 第2版.7. イチジク 245-252.志村 勲・池田富喜夫(執筆者代表).2012.文永堂

5)平田尚美.果樹園芸大百科 13.農文協編.イチジク.2000.農山漁村文化協会. 

6)川那部浩哉 監修、井上民二・加藤 真 編.シリーズ地球共生系4 花に引き寄せられる動物.花と送粉者の共進化.p31(井上民二), p50(加藤 真).1996.平凡社

7)横山 潤・堀田 満.植物の世界 8.週刊朝日百科89. イチジク.1995.8-141~8-143.朝日新聞

8)間瀬誠子.果物学 果物なる樹のツリーウォチング.第10章 イチジク.204-213.八田洋章・大村三男 編.2010.東海大出版.

9)加藤憲市.園芸植物大事典 1.イチジク.216-219.塚本洋太郎 総監修.1998.小学館.

10)河瀬憲次.果樹園芸大事典.35.イチジク.936-951.佐藤公一・森 英男・松井 修・北島 博・千葉 勉 編著.1972.養賢堂.10b)同p938、10c)同p937

11)アリストテレス全集 7.動物誌上.第五巻 第三十二章.島崎三郎 訳.1969.岩波書店.⦅11b)同(訳者註p379)⦆

12)テオフラストス.植物誌.第2巻.第八章.大槻真一郎・月川和雄 訳.1988.八坂書房.⦅12b)第2巻第8章註釈⦆

13)プリニウス博物誌 植物編.岸本良彦.Ⅴ 森林(野生)樹 五一 樹齢と結実の仕方.大槻真一郎 責任編集.2009.八坂書房.⦅13b:同註釈.13c:同 加藤直克.Ⅳ 果樹二 二十一 イチジクの成長.13d:岸本良彦.Ⅱ 樹木 二.十四 エジプトイチジク、十五 キプロスイチジク⦆

14)プリニウスの博物誌Ⅱ.第15巻 果樹の性質. イチジクの人工的な成熟.中野定雄・中野里美・中野美代 訳.1986.⦅雄山閣.14b:第十三巻 外国の樹木.十四 エジプトのイチジク. 十五 キプロスのイチジク⦆

15)Ira J. Condit.Walter T. Swingle(foreword). The Fig. chapter Ⅳ, Ⅴ, ⅩⅣ. 1947. Waltham, Massachusetts, U.S.A. The Chronica Botanica Co.

16)クライマクテリック.最新農業技術事典.ルーラル電子図書館.農文協

17)金戸橘夫.朝日百科世界の植物.7 種子植物Ⅶ.1878-1879.1979.朝日新聞社

18)菊池秋雄.果樹園芸学.上巻.果樹種類各論.第12章 無花果.312-326.1948.養賢堂

19)菅 洋.ものと人間の文化史 119.有用植物.イチジク.224-227.2004.法政大学出版局

間違いと思われる記載(解釈を除く)

  • 文献2:p255:Philotrypesis cariacae (誤)・・・(正)Philotrypesis caricae
  • 文献9:p217:スミルナ系で受精(誤)・・・(正)カプリ系で受精(受粉)
  • 文献9:p217:胡蜂(スズメバチ)(誤)・・・(正)小蜂
  • 文献16:ノンクライマクテリック型果実(誤)・・・(正)クライマクテリック型果実
  • 文献18:p322: mammi(誤)・・・(正)mamme
  • 文献17:p1879:蓬萊柿:ほうらいがき(誤)・・・(正)ほうらいし
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