万物の霊鳥(1) カラスに勝った人類

霊鳥類のカラス・・・Homo crow1

TP; ゼロは記号として用いられているのか、数として計算の対象となっているのかにより、隔絶の違いがあり、その意味するところは思想・哲学が大きく影響している。それ自身が利用できるかどうかである。例えば、石がある。それそのものはそこにある物である。そこに、鋭く欠けた石がある。それを見つけたのは発見である。多くの人類(ホモ・エレクトス、ホモ・サピエンス、ホモ・ネアンデルターレンシス、ホモ・フローレシエンシス、ネシェル・ラムラ・ホモa)など)は見ているが、それが他とは違った<石>であることに気付いた人(ここは個)は、考える葦である。月に足跡を残すには、次の一歩が必要である。ここで終わると人類は人間(アリストテレスの言葉で述べると、他の動物にはない善悪正邪等々の固有の知覚(言葉)を共通に有し、家や国を作り上げることができた動物:ポリス(国)的動物enzoon politikon)1)になれなかった。それを用いることである。手で握り、鋭く削れた石で、ものを切る、叩く、つぶすということを思いつく、発明が大事である。さらに小型2)で薄く加工した石刃3), 4)を作った。ヒトは工具5)(道具ではない)を作る動物であるという定義かもしれないが、この発見から発明(日本では「容易に思いつく」のは特許にならない)には大きな思考のブレイクスルー(映画のヒュパティア的転回注2))が必要であった。多くの人が見ている。目の前にある。誰もが、誰にでもチャンスがある。しかし、それに気がつくのは人類を盲目的な経済集団に導く高度な進化を促すことに貢献したごく稀な個である。なぜ気がつくことができたのか?カラス(corvus macrorhynchos)が車を利用してクルミ割に気が付くことと同じであるのかどうか。これは専門分野の研究者に任せることにしょう。発明への転換(イノベーション)が重要である。もし、ホモ(Homo)がパン(Pan)、あるいはコルウス(corvus)より先に閃き(serendipity)が生じていなければ人類は「賢い人」になることを逃していたかもしれない。

石刃について これをシェイ(John J. Shea)博士、マリアン(Curtis Marean)博士らは石刃を棒に取り付けて投擲用の武器を作ったと推測している3),4)。その通りと考えられるが、これらの道具は多数生産され、複製という極めて重要な概念に基づいている。勝手な想像であるが、これらは情報伝達(通信)にも使ったのでないかと思われる。手にもって歩くことができ、簡単に木や皮、石などに傷を付けることができる。縄張り、食料、危険などを示す目印を刻むことができる、現在のエンピツである。多くのヒトが、誰もが簡単に利用できる便利な道具(device)である。しかし、当時の木などは跡形もなくなり、検証はできない。ちなみにオーカー(赤鉄鉱など)の顔料も目印にもなるが、粉の持ち運びを考えると面倒である。

石器の小型化について シェイ博士は、石器の小型化は石器の生産戦略の1つであり、人類と人類以外の道具の使用の重要な違いを示す2)と論じている。石器の小型化によって、槍、弓などに取り付けて軽量化することが可能となり、小さな動物や鳥なども捕まえることができるようになった。物の小型軽量化は技術革新においても重要な要素である。ナノテクノロジーの重要性は20年も前から言われており、第2期科学技術基本計画の重点分野のひとつであった。現状はどうなっているのであろうか。詳しく書かないが国内の科学技術産業をみると推測できる。

ここで持論を複製について 小型化も重要であるが、複製(いわゆる普通いわれているコピー:同じものをいくつもつくること。量産化)が極めて重要である。コピーの重要性は大学に入って、過去の試験問題の回答をコピーして乗り越えられたことで知った。この時代にコピーがなかったら赤点になっていたと予想される。‘おきな’は、この複製するという技術に人類が気づいたことが、他の動物と袂を分かち合ったのではないかと根拠のない想像をする。生物いわゆる生命は自己複製を行うことで自己の遺伝情報を維持または増殖していく(鉱物の結晶も自己複製であるといわれるかもしれないが)。石器も割り方によって多くの同じような石刃をたくさん作り出す複製方法(ルヴァロワ技法)を編み出した。この重要性を見逃してはいけない。言葉の記憶による伝達、古代の写本は、複製というにはほど遠いが、活字による印刷は革命的なできごとであった。古代の文章、絵文字などの原本とその写しを見比べるとかなりの違いがある。写した個人の主観によりゆがめられていて、本来の意味も感情も失せている。言わずもがな言葉は正確には伝わらない。マリス(Kary Banks Mullis)が特許にしたPCR法に誰も気が付いていないことに驚いたと話していたのは記憶に新しい。無から有を生み出すのは複製である。

さて、カラスが霊鳥類ではなくてヒトが霊長類になれたのはなぜか。上野佳也博士は、人類の石器には、「切る」という機能があることに注目した6)。オラウータンの剥片の製作・使用の実験から類人猿の石器使用は、「叩く」ことであり、「切る」という行為は極めて困難であった7)。また、ボノボに石器作製の技術を教えることで、石を他の石で打ち割って剥片を刃物として使用することができた8), 9)。彼らは飼育されており、ヒトが教えることによって習得した。しかし、人類は剥片や礫器を「切る」、「叩き切る」ことに使った。これが人間と類人猿の道具の画然たる差としている。なるほど、そうである。鳥類には道具をこしらえて使うことはできるが、使い道は引っ張ることで、切るという行動はない。くちばしで突き破る、引きちぎることはあるが、道具で切るということは今のところできない。また、上野氏は火の使用も刃と同様に危険な道具であり、自分を傷つけないように制御する必要があることから情報の発生を通じて技術の高度化をもたらしたのではないかとしている。

思うに、ヒトがカラスに勝てたのは危険なもの、リスクのあるものにチャレンジし、利用したことが勝因と考える。よくぞやってくれた。これは閉塞的な、リスクをとらない、みんなでハンコを押しあう(責任者がいない)老人天国に耳の痛い話である。。。。マイナス思考はよくない。これからである。リスクは可能性を秘めている。鳥に負けるな!

最初はゼロの話を始めるつもりであったが、脱線した。考古学者でも歴史学者でもありません。勝手な空想による暇つぶしのささやきです。⇼⇸⇺おきな⇻⇼⇸

補足1;工具(ツール)を使うのはヒトだけである。工具の定義は「工作に用いる道具」であるが、ウィキペディアによれば、「工具(tool)は、人類を地球上の全ての他の動物から分離した決定的な象徴である。人類が人類たるシンボルといえる。なぜなら、一部の動物は食物を集めるために道具を使う。しかし動物の場合、一旦使用すればそれを捨ててしまう。一方、人間は工具を使用することで終わらず、その工具をより使い易くするか、もしくはより良く仕事をすることができるよう改善しようとする」とある。ウーム。そうであるが、何かしっくりこない。まあ、デバイスとツールの区別を知っただけよしとしょう。

補足2;ネアンデルターレンシスはサピエンスと交雑可能であることから生物学的に同種ともいわれるが、植物における種間交雑による後代の作出、あるいはゲノム情報の観点から「交雑可能性」が種の定義の主とはいえないと考える。

注1)霊鳥類は霊長類のパロディ。Homo crowという学名はありません。

注2)地動説。アリスタルコスが最初に唱える。映画(アレクサンドリア)ではヒュパティアが地動説の根拠となる楕円軌道を発見(あくまで映画の話)

アイキャッチ画像はラスコーの壁画の鳥人間の一部を創作

引用文献・参考図書

1) アリストテレス全集 15.政治学 経済学.第1巻 第2章.山本光雄訳.岩波書店.

2) Justin Pargeter, John J. Shea.Going big versus going small: Lithic miniaturization in hominin lithic technology.72-85. 2019

3) Kerri Smith. Nature News. Early humans tooled up, 07 November 2012

4) NHKスペシャル取材班.ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか.角川書店

5) 工具.ウィキペディア 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』.最終更新 2023年12月30日 (土) 19:19

6) 上野佳也.人間の道具使用技術系の発生について.東京大学文学部考古学研究室研究紀要 巻 1.199-214. 1982

7) Wright, R. V. S. Imitative Learning of a Flaked Stone Technology—The Case of an Orangutan. Mankind Ⅷ. 296-306.1972

8) 井原泰雄・梅﨑昌裕・米田穣 編.人間の本質にせまる科学.自然人類学の挑戦.東京大学出版会

9) Toth N. and Schick, K. The Old man: The tool making of early hominins and chimpanzees compared”, Annual Review of Anthropology. 38. 209-305. 2009

参考

a) Hila May. A Middle Pleistocene Homo from Nesher Ramla, Israel. SCIENCE. 25 Jun 2021. Vol 372, Issue 6549. pp. 1424-1428.

キャリー マリス著.マリス博士の奇想天外な人生.福岡伸一訳.早川書房

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